平成4年度(1992年度)の法人課税は、厳しい財政事情に対応する増収措置と、投資を後押しする特例の見直しを組み合わせた改正です。法人特別税を2年間の措置として創設し、欠損金の繰戻しによる還付を原則として停止する一方、エネルギー関連投資の新制度などを整えました。
法人特別税の2.5%は、売上や利益に直接掛ける税率ではありません。対象となる法人税額を基に計算する点、適用時期を事業年度の終了日で判断する点を、具体例とともに確認します。
平成4年度の法人課税の主な改正
当時の制度を理解するには、追加の税負担、還付制度の制限、設備投資の特例を分けて整理すると分かりやすくなります。同じ「2年間の措置」でも、対象や効果は異なります。
| 改正項目 | 主な内容 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 法人特別税 | 基準法人税額から年400万円を控除した残額に2.5% | 利益への直接課税ではない |
| 欠損金の繰戻し還付 | 解散等の場合を除き2年間適用停止 | 繰越控除の廃止とは異なる |
| 投資の特例 | エネルギー需給構造改革投資促進税制を創設 | 対象設備・要件と選択方式 |
| 特別償却等 | 公害防止用設備などの割合・対象を見直し | 償却額と税額を混同しない |
法人特別税は基準法人税額を基に計算
法人特別税は、財政の現状を踏まえた臨時の国税です。平成4年法律第15号は、法人の基準法人税額から年400万円を差し引き、その残額を課税標準とする仕組みを定めました。
年400万円の控除と2.5%の税率
基準法人税額とは、法律が指定する法人税の計算規定により算出する額です。通常の申告で納付する額を無条件にそのまま使えるとは限らず、法律上の定義と調整を確認する必要があります。
1年の事業年度で、必要な調整を反映した基準法人税額が1,400万円、外国税額の控除など追加の調整がない場合を考えます。課税標準は1,400万円-400万円=1,000万円、法人特別税は1,000万円×2.5%=25万円です。
| 仮定した基準法人税額 | 年400万円控除後 | 法人特別税の計算例 |
|---|---|---|
| 300万円 | 課税標準なし | 0円 |
| 800万円 | 400万円 | 10万円 |
| 1,400万円 | 1,000万円 | 25万円 |
この400万円は「会社の所得から差し引く控除」ではありません。たとえば利益が1,400万円であっても、それを上の表の基準法人税額に置き換えて計算することはできません。
原則は期間内に終了する事業年度が対象
制定時の指定期間は平成4年4月1日から平成6年3月31日までです。原則として、この期間内に終了する事業年度が対象となります。年度名だけを見て、平成4年4月1日以後に「開始する」事業年度と読み替えないようにします。
- 決算日を確認する:1年の決算期が続く法人では、事業年度の終了日が指定期間に入るかを確認します。暦年や税制改正年度と、会社の決算期間は必ずしも一致しません。
- 短い事業年度では控除を調整する:1年未満の場合は、400万円を12で割って月数を掛けた額が控除額となります。6か月なら200万円という計算です。
- 設立・合併・決算期変更を確認する:指定期間内の設立や合併、期間内の事業年度の月数が合計24か月にならない場合などには、課税事業年度について特別の規定があります。終了日だけで単純に判断できない場合があります。
欠損金の繰戻し還付を原則として停止
赤字が出た際に、過去に納めた法人税を取り戻す仕組みにも制限が設けられました。平成4年度改正では、平成4年4月1日から平成6年3月31日までの間に終了する事業年度の欠損金について、繰戻し還付を原則として適用しない措置を導入しています。
「繰戻し」と「繰越し」は別の制度
繰戻し還付は、当期の税務上の欠損金を過去の所得に対応させ、既に納めた税額の還付を請求する仕組みです。一方、繰越控除は、欠損金を将来の所得計算に用いる仕組みです。今回の停止を、赤字を翌期以後に使う制度まで全て廃止したと理解するのは誤りです。
| 制度 | 向かう時期 | 効果の違い |
|---|---|---|
| 繰戻し還付 | 過去の所得がある期 | 既に納付した法人税の還付を請求 |
| 繰越控除 | 将来の所得がある期 | 将来の課税所得の計算に欠損金を反映 |
資金の面でも違いがあります。還付を受けられる場合は過去の納付に対応した入金につながりますが、繰越控除は将来に所得が出ることなどが前提です。「赤字だからすぐに現金が戻る」とは限りません。
解散等の例外と後年の改正を区別する
制定時の不適用規定には、法人税法が定める解散等の場合に関する例外が設けられています。通常の継続事業の赤字と、例外に該当する事情のある赤字を分けて確認する必要があります。
現在の解説で見かける中小企業者等の取扱いや不適用期間の延長を、そのまま平成4年度の創設時に当てはめないことも大切です。この年度の改正は、まず2年間の原則停止として導入された制度として読みます。
設備投資の特例は創設と整理を同時に実施
法人課税の改正は負担増だけではありません。投資分野では新制度を設ける一方、既存の特別償却・割増償却の割合や対象を調整しました。
エネルギー関連投資に償却と税額控除の選択
エネルギー需給構造改革投資促進税制は、一定の要件を満たす対象資産について、取得価額の30%の特別償却と7%の特別税額控除のいずれかを選択できる、2年間の措置として創設されました。海外の生産油田に係る鉱業権等は15%・3.5%という別の割合が定められています。
税額控除には当期の税額の20%相当額という限度があります。設備が対象だからといって、取得価額の7%を制限なく受け取れる制度ではありません。特別償却は減価償却に関する所得計算上の措置、税額控除は税額から差し引く措置であり、効果を比べて選ぶ必要があります。
公害防止用設備などの償却割合を見直し
公害防止用設備の特別償却割合は19%から18%に引き下げられました。ただし、認定計画に基づく一定の産業廃棄物処理施設等には20%の特別償却を認めるなど、設備と認定の条件によって取扱いが分かれます。
取得価額1,000万円の設備で一般の割合のみを比べれば、特別償却部分は190万円から180万円となり、差は10万円です。これは税金が10万円増えるという意味ではありません。所得の計算に反映する償却額の差として理解します。また、倉庫用建物等の割増償却は20%から18%に変更され、適用期限が2年延長されました。
当時の法人税制を確認する順序
平成4年度の法人課税では、数字だけでなく、その数字が「所得」「法人税額」「取得価額」のどれに対するものかを確かめると誤解を防げます。
- 会社の事業年度と、設立・合併・決算期変更の有無を確認する。
- 法人特別税の基準法人税額と、年400万円の控除額を確認する。
- 欠損金について、繰戻し還付の停止と例外を確認する。
- 投資について、対象設備、取得時期、認定要件、償却と税額控除の選択を確認する。
法人特別税の2.5%を利益に直接掛けず、還付停止を繰越控除の廃止と取り違えないことが、この年度を読み解く基本です。適用期間と計算の基準を一緒に押さえれば、負担増と投資支援の両面を整理できます。
出典:法人特別税法(平成4年法律第15号・制定時)、平成4年法律第14号、平成4年度税制改正の要綱。当時の改正内容を解説しています。







