平成4年度税制改正

平成4年度の相続税改正|控除と宅地評価

平成4年度(1992年度)の資産課税は、土地の相続税評価を地価公示価格水準の8割程度へ適正化することに伴い、相続税等の負担を調整する改正です。基礎控除を引き上げ、税率の適用区分を広げるとともに、小規模宅地等の評価減を拡充しました。

基礎控除は「4,800万円+950万円×法定相続人の数」となります。後年の5,000万円・1,000万円という金額と混同せず、平成4年1月1日以後の相続等に対応する内容として確認しましょう。

土地評価の見直しと負担調整を一緒に実施

この年度の改正は、控除額だけが単独で変わったものではありません。土地の評価を適正化する一方、その影響を調整するために課税最低限や税率区分などを見直した点が中心です。

項目改正前平成4年度改正
相続税の基礎控除4,000万円+800万円×法定相続人の数4,800万円+950万円×法定相続人の数
小規模宅地等・事業用60%減額70%減額
小規模宅地等・居住用50%減額60%減額
相続税・贈与税の税率区分従来の区分各税率が適用される金額の幅を拡大
相続税の申告期限原則6か月経過措置を経て10か月へ延長

土地評価の「8割程度」と小規模宅地等の「70%・60%減額」は、異なる段階の取扱いです。全ての土地の評価を一律に70%又は60%下げるという意味ではありません。

基礎控除は4,800万円+950万円×人数

基礎控除は、相続税の計算で遺産全体に対して差し引く額です。平成4年度改正では、定額部分を800万円、法定相続人1人当たりの部分を150万円引き上げました。

法定相続人が3人なら7,650万円

法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であると仮定すると、改正後の基礎控除は4,800万円+950万円×3人=7,650万円です。改正前の6,400万円と比べると、1,250万円増えます。

法定相続人の数改正前の基礎控除改正後の基礎控除
1人4,800万円5,750万円
2人5,600万円6,700万円
3人6,400万円7,650万円

7,650万円を3人それぞれが差し引くのではありません。遺産に係る1つの基礎控除として計算します。また、税額から7,650万円を直接引く制度でもありません。

人数と遺産の課税価額を確認する

計算に使う法定相続人の数と、実際に遺産を受け取った人数は、必ずしも同じとは限りません。養子や相続放棄などがある場合には、当時の相続税法の人数の取扱いを確認します。

比較する遺産額も、預貯金と不動産の売値を足しただけの額とは限りません。財産の評価、非課税財産、債務など、課税価額を構成する項目を整理した上で基礎控除と比較することが大切です。

税率の適用区分を広げて負担を調整

相続税と贈与税は、各税率が適用される金額の区分を広げました。最高税率を下げるだけの改正とは異なり、同じ税率が適用される範囲を見直しています。

相続税の10%区分は400万円から700万円へ

相続税では、10%が適用される区分の上限が400万円から700万円に、15%区分の上限が800万円から1,400万円に、20%区分の上限が1,400万円から2,500万円に広がりました。最高税率70%も、従来の5億円超から10億円超へと適用区分が変わります。

これらは、基礎控除を引いた課税遺産総額を法定相続分に応じて分け、相続税の総額を計算する段階の金額に対応します。遺産総額に1つの税率をそのまま掛ける計算ではありません。

贈与税の税率区分も拡大

贈与税では、10%区分の上限を100万円から150万円へ、15%区分の上限を120万円から200万円へ広げるなど、相続税に対応した調整が行われました。税率表の金額は、その年の贈与財産の総額を無条件に非課税にする額ではありません。

過去の贈与を確認する際は、贈与が行われた年、当時の控除や特例、その控除後に税率を適用する金額を分けて整理します。

小規模宅地等は200㎡までの評価減を拡充

平成4年度の要綱で扱う小規模宅地等の面積は200㎡です。そのうち、一定の要件に該当する事業用宅地等の減額割合を60%から70%へ、居住用宅地等を50%から60%へ引き上げました。

評価額3,000万円の対象宅地で比べる

特例の対象となる200㎡以内の部分の評価額が3,000万円であり、他の調整がないと仮定すると、事業用宅地等は70%減額により900万円、居住用宅地等は60%減額により1,200万円となります。

対象部分の用途改正前の特例適用後改正後の特例適用後
事業用宅地等3,000万円×40%=1,200万円3,000万円×30%=900万円
居住用宅地等3,000万円×50%=1,500万円3,000万円×40%=1,200万円

表の差は評価額の差です。相続税額が必ず300万円下がるという意味ではなく、ほかの財産や基礎控除、相続人の構成などと合わせて税額を計算します。

用途・面積・申告を別々に確認

  • 対象になる用途を確かめる:宅地の利用状況と当時の特例要件を確認します。建物があるという事実だけで、全ての土地に減額が適用されるわけではありません。
  • 対象部分を区分する:200㎡を超える場合や用途が複数ある場合は、どの部分が特例の対象かを整理します。後年の330㎡・80%といった取扱いを平成4年度へ持ち込まないようにします。
  • 申告要件を確かめる:特例は、基礎控除と違い、申告書への記載や関係書類などの要件を伴います。特例を反映して税額がなくなる場合でも、当然に申告不要とは判断せず、当時の条文と申告要件を確認します。

申告期限は段階的に10か月へ延長

改正法では申告期限を10か月とする一方、平成4年から平成7年までの相続には経過措置を設けました。平成4年度改正後の相続が、全て直ちに10か月になったわけではありません。

相続開始の年経過措置の内容
平成4年6か月を経過する日又は平成4年12月31日の、いずれか遅い日まで
平成5年7か月を経過する日又は平成5年10月31日の、いずれか遅い日まで
平成6年8か月を経過する日又は平成6年10月31日の、いずれか遅い日まで
平成7年9か月を経過する日又は平成7年10月31日の、いずれか遅い日まで
平成8年以後10か月以内

期限の起算は、相続の開始があったことを知った日の翌日を基準に、当時の法律に従って確認します。相続開始の年、通常の期間、経過措置の指定日を照らし合わせる必要があります。

当時の資産課税を確認する順序

平成4年度は土地評価の適正化と負担調整が一体で行われた年度です。過去の申告や制度の沿革を調べる場合は、次の順で整理すると理解しやすくなります。

  1. 相続・贈与の日を確認し、平成4年1月1日以後の適用かを確かめる。
  2. 土地などの評価と課税価額を整理する。
  3. 当時の基礎控除と税率区分を確認する。
  4. 小規模宅地等の用途・面積・申告要件を確認する。
  5. 申告期限の経過措置を確認する。

基礎控除の引上げだけで「必ず減税」と判断せず、評価の見直しと一緒に見ることが大切です。当時の金額、面積、期限をそろえて確認すれば、平成4年度の資産課税を後年の制度と区別できます。

出典:相続税法の一部を改正する法律(平成4年法律第16号)、平成4年法律第14号、財務省・相続税の主な改正の内容、平成4年度税制改正の要綱。本文は当時の改正内容の解説です。

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