国際課税

平成3年度の国際課税|移転価格と寄附金

平成3年度(1991年度)の国際課税では、海外の関係会社へ所得が移る取引への対応が強化されました。中心となるのは、移転価格税制の更正期間を3年から6年へ延ばすこと、国外関連者への寄附金を損金に算入しないこと、そして軽課税国の支店を使う子会社等へのタックス・ヘイブン税制の見直しです。

海外子会社への支援を調べる際は、「取引価格の問題」「無償供与の問題」「子会社の所在地と支店の課税の問題」を分けると、改正の役割が見えてきます。この記事では、当時の改正をこの三つの視点から整理します。

平成3年度の国際課税改正を一覧で確認

この年度の改正は、新しい国際課税制度を一から作ったものではありません。既存制度を使って所得の海外移転を捉えるため、調査期間と課税対象の扱いを整えた改正です。

改正項目主な内容確認する資料
移転価格税制更正の期間制限を3年から6年へ延長過去の取引契約・価格設定・比較資料
国外関連者への寄附金寄附金の額を全額損金不算入とする支援の目的・対価・契約・供与の実態
比較対象企業への調査調査権限に関する規定を整備独立した企業との取引比較
タックス・ヘイブン税制一定の子会社等を軽課税国に本店があるものとみなす本店所在国と支店所在地の課税制度

移転価格税制は昭和61年度に導入されており、平成3年度の改正はその運用を強化する位置づけです。現在の制度や文書化義務を、そのまま当時の取引へ当てはめることはできません。

移転価格の更正期間は3年から6年へ

海外の関係会社との取引は、国内だけの取引より資料収集や比較に時間がかかります。平成3年度の改正では、移転価格税制について更正の期間制限が6年へ延長されました。

価格の根拠を過去の取引まで追えることが重要

移転価格税制は、国外関連者との取引を独立した企業同士の価格に引き直し、課税所得を計算する仕組みです。例えば日本の親会社が海外子会社へ製品を販売する場合、販売価格だけでなく、両社が担う機能や負担するリスクなどが比較の手掛かりになります。

更正期間の延長は、税率が上がることを意味しません。税務当局が過去の取引について更正できる期間の変更です。また、期間の起算点や経過措置は個別の法令で確認する必要があり、「取引の日から一律6年」と読み替えないようにします。

比較対象企業の調査権限も整備

同年度には、比較対象企業に対する調査権限の規定も設けられました。関係会社同士の価格だけを見ても、独立企業間の価格との違いは分かりません。比較に必要な情報を得る仕組みが、期間の延長と合わせて整えられた点を押さえておきましょう。

国外関連者への寄附金は全額損金不算入

取引価格を操作する場合と、単に金銭などを無償で与える場合では、従来の課税上の扱いに差がありました。平成3年度の改正は、その差を調整するため、国外関連者に対する寄附金の全額を損金に算入しない仕組みを導入しました。

会計上の費用と税務上の損金を分ける

仮に、国外関連者へ支出した100万円がこの規定の対象となる寄附金と判定された場合、100万円は法人税の所得計算上、損金になりません。会計で費用に計上していても、税務上の所得計算で調整が必要になります。ただし、この100万円自体が納税額になるわけではありません。

海外に送金したという理由だけで、すべてが寄附金になるわけではありません。製品代金、役務の対価、貸付け、出資、無償供与では取引の性質が異なります。名称よりも、契約と実態に即して判定することが大切です。

海外子会社への支援で確認すること

  • 支援の目的と受益者:誰の事業のための支出か、親会社自身にも便益があるかを整理します。単に「グループのため」と説明するだけでは、各社の負担を判断しにくくなります。
  • 対価と契約:提供した業務、請求の有無、費用負担の合意を確認します。契約書の呼び名だけでなく、実際に行った作業や支払いとの対応が必要です。
  • 事業年度と適用規定:支援を行った時期と、当該事業年度に適用される法令を照合します。後の改正による取扱いを、平成3年度の改正と混同しないためです。

軽課税国の支店を使う子会社等も見直し

タックス・ヘイブン税制では、本店の住所だけで課税の軽重を捉えられないケースへの対応が行われました。注目すべきなのは、本店所在国が海外支店所得を非課税とする場合です。

本店所在国と支店の課税を組み合わせて確認

当時の改正資料では、海外支店所得を非課税とする国に本店を置く子会社等が、軽課税国の支店を通じて営業活動を行う場合、その子会社等を軽課税国に本店があるものとみなす措置が示されています。

確認の流れ:本店所在国の支店所得の扱い → 支店所在地の課税 → みなし本店所在地の規定 → 他の適用要件

例えば本店のあるA国が海外支店所得を非課税とし、B国の支店が軽い税負担で営業している場合、A国の本店所在地だけで判定を終えないという考え方です。この例だけで合算課税が確定するわけではなく、その他の要件も確認します。

平成3年度の改正を読み解く確認手順

この年度の国際課税は、税率の比較だけでは理解できません。取引の対価、無償供与、海外拠点の課税という順に分けて、当時の資料を照合しましょう。

  1. 対象となる取引・支援と、その事業年度を特定する。
  2. 価格設定の問題と寄附金の問題を分け、契約と実態を整理する。
  3. 子会社の本店所在国だけでなく、支店所得への課税も確認する。
  4. 改正内容、施行時期、経過措置を当時の法令と照合する。

平成3年度の要点は、移転価格の更正期間延長、国外関連者寄附金の全額損金不算入、そして支店を利用した軽課税への対応です。三つを別々に理解することで、海外子会社との取引を調べるときに必要な資料を整理できます。

出典:国税庁『第117回国税庁統計年報書』税制改正の概要、羽島和宏「外国子会社合算税制の課税上の問題についての一考察」23~24頁。本文は平成3年度改正の歴史的な解説です。

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