平成2年度の金融・証券税制では、単位未満株式を発行法人に譲渡する場合の課税と納付方法が整備されました。少ない株数の売却だから非課税になるという内容ではなく、当時の源泉分離選択課税を利用できる取引の範囲を広げる改正です。
この記事は、平成2年度税制改正の要綱にある株式譲渡と証券取引責任準備金の変更を整理します。過去の株式売却の記録を読むときに、現在の口座制度と混同せず、何を確かめればよいかを解説します。
平成2年度の証券税制の主な変更
個人の株式譲渡に関する変更と、事業者の準備金に関する変更を分けて見ると、改正の対象を理解しやすくなります。準備金の積立率は、個人投資家の売却益にかかる税率ではありません。
| 制度 | 改正の内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 単位未満株式の譲渡 | 発行法人への譲渡に源泉分離選択課税を認める | 対象となる上場株式等の譲渡 |
| 有価証券取引税 | 上記の取引の納付方法を特別徴収に | 取引に伴う税の納付 |
| 証券取引責任準備金 | 1株当たり0.28銭から0.23銭へ。期限は2年延長 | 準備金制度の対象事業者 |
| 商品取引責任準備金 | 積立率を10万分の1.2から10万分の1へ。期限は2年延長 | 準備金制度の対象事業者 |
単位未満株式は譲渡先がポイント
要綱が対象としているのは、単位未満株式をその株式の発行法人に譲渡する場合です。株数が少ないという事実に加えて、どこへ譲渡したかを確認する必要があります。
源泉分離選択課税を利用できる取引に追加
当時は、上場株式等の譲渡所得等について源泉分離選択課税という仕組みがありました。平成2年度の改正は、発行法人への単位未満株式の譲渡について、この課税方式の適用を認めるものです。要綱では平成2年4月1日以後の譲渡に適用すると示されています。
例えば、古い精算書に発行会社による買取りが記載されている場合には、その日付と当時選択された課税方式を確認します。現在の証券会社で少額の株式を売る説明を読んでも、平成2年当時の手続をそのまま説明することにはなりません。
株数・売却金額・利益は別々に記録する
「小さな金額だから税金も申告も関係ない」とまとめず、株数、受け取った金額、取得に要した金額を区別して整理しましょう。ただし、当時の源泉分離選択課税の計算や選択の可否は当時の規定によるため、現在の利益に対する税率を持ち込むことも避けます。
源泉徴収と特別徴収を混同しない
改正では、有価証券取引税の納付方法を特別徴収による納付とすることも示されています。所得に関する源泉徴収の仕組みと、取引に関する税の納付方法は、確認する税が異なります。精算書に複数の税や費用があるときは、一括して「株の税金」と扱わず項目ごとに読み分けることが大切です。
取引責任準備金は積立率を引下げ
証券取引責任準備金と商品取引責任準備金では、適用期限を延長する一方、積立率を引き下げる内容です。制度が続くことと、従来と同じ条件で積み立てられることは別の話になります。
証券取引と商品取引で単位が異なる
証券取引責任準備金は1株当たりの銭単位、商品取引責任準備金は10万分の割合で示されています。数字だけを並べて比較すると、どちらも同じ率の変更だと誤解しやすいため、資料には単位まで残します。
決算資料を確認する場合、準備金の計算対象、当時の積立率、適用する事業年度を照合します。準備金に関する税務上の取扱いと、実際の資金を別口座に置くかどうかという資金管理も、区別して考える必要があります。
過去の株式売却は4つの資料を確認
古い取引を調べる場合は、最初に売却の時期と相手を確認するのが有効です。平成2年度の改正を参照しても、それだけで個別の税額や申告の要否が決まるわけではありません。
- 買取りや売却の通知。発行会社への譲渡だったか、別の売却経路だったかを確認します。取引先を特定すると、改正の対象になる取引かを検討しやすくなります。
- 精算書と入金記録。売却代金、手数料、徴収された税を分けて記録します。入金額だけでは、売却代金や税の内容が分からない場合があります。
- 取得と保有の資料。株式分割、相続、移管などの記録も探します。保有株数がどのように変わったかを整理すれば、少ない株数が残った事情を確認できます。
- 当時の申告や選択の記録。現在の特定口座やNISAの説明と混ぜず、その時点で選択された方式を確認します。不明点は取引年と資料を示して照会すると、具体的な検討につながります。
平成2年度の証券税制は、単位未満株式の発行法人への譲渡に関する課税方式と納付方法の整備、取引責任準備金の条件変更がポイントです。売却額の大小だけで判断せず、当時の取引の種類と記録を確かめましょう。
出典
改正内容と適用時期は平成2年度税制改正の要綱(国立国会図書館収録)の準備金および単位未満株式の項目を参照しています。改正の経緯は財務省「平成2年度の税制改正」を参照しています。






