平成2年度の国際課税では、非居住者または外国法人の不動産譲渡収入に対し、10%の源泉徴収を行う制度が示されました。譲渡による利益だけを対象にした率ではなく、収入に対する徴収である点が重要です。
同年度には、国際金融や船舶貸付けの特例の延長、技術等海外取引の控除率の見直しもあります。この記事では当時の要綱をもとに、対象となる取引、除外条件、改正と延長の違いを整理します。
平成2年度の国際課税は対象ごとに整理
不動産の譲渡、年金の支払い、海外事業では、それぞれ改正内容が異なります。海外との関係があるというだけで、すべて同じ源泉徴収の対象になるわけではありません。
| 取引・制度 | 要綱の内容 |
|---|---|
| 非居住者・外国法人の不動産譲渡 | 譲渡収入に10%の源泉徴収。一定の居住用取得は除外 |
| 非居住者の公的退職年金等 | 源泉課税の対象を拡大し、支払金額から一定額を控除後に課税 |
| 特別国際金融取引勘定の預金等の利子 | 非課税措置を2年延長 |
| 船舶貸付けに係る国内源泉所得 | 源泉徴収の不適用を2年延長 |
| 技術等海外取引の特別控除 | 特許権等の譲渡等による収入金額に係る控除率を22%から12%へ。期限は2年延長 |
この表の数字は平成2年度の改正を説明するものです。後年の税率、租税条約、国外所得に関する制度改正をそのまま当時の取引へ当てはめないようにしましょう。
不動産譲渡収入に10%の源泉徴収
不動産の改正は、売主が非居住者または外国法人である取引の収入について、源泉徴収を行う仕組みを設ける内容です。要綱は平成2年4月1日以後の不動産の譲渡に適用するとしています。
売却益と譲渡収入を分けて考える
源泉徴収の対象として示されているのは「不動産譲渡収入」です。取得費などを差し引いた売却益に10%を掛けるという説明ではありません。手元に残る代金の確認と、最終的な所得・税額の計算を分ける必要があります。
例えば、当時の対象取引で、適用除外に当たらない不動産の譲渡収入が6,000万円であるとすると、10%相当額は600万円です。この例は徴収額の考え方を示すものであり、取得費などを考慮した最終税額が600万円になることを示していません。
1億円以下という金額だけでは除外できない
要綱の除外条件は、個人が居住用に譲り受ける1億円以下の不動産です。したがって、金額、買主が個人かどうか、居住用の取得かという条件を合わせて確認します。
売主の用途と買主の用途を取り違えない
「これまで自宅だった」という売主側の事情だけで、買主の居住用取得という条件を満たすとは限りません。買主が法人であったり、別の目的で取得したりする場合には、金額だけで除外と判断しないことが重要です。過去の契約書を読むときも、双方の立場を分けて整理しましょう。
国際金融や技術取引は延長と縮減を確認
特例の延長は、海外取引すべてへの優遇の追加を意味しません。対象となる勘定や所得の種類が限定されている措置では、その限定を含めて読む必要があります。
国際金融と船舶貸付けの措置を継続
特別国際金融取引勘定で経理された預金等の利子の非課税と、船舶貸付けに係る国内源泉所得への源泉徴収の不適用は、適用期限を2年延長する内容です。一般の海外預金の利子や、あらゆる貸付収入が同じ取扱いになるという意味ではありません。
資料を確認するときは、利子がどの勘定で経理されていたか、契約がどの種類の貸付けかを調べます。取引の名称が大まかなままだと、対象の特例を絞り込めません。
技術等海外取引は控除率を引下げ
技術等海外取引に係る所得の特別控除では、特許権等の譲渡等による収入金額に係る控除率を22%から12%に引き下げ、期限を2年延長する内容です。所得控除の期限が続く一方で、対象となる収入についての控除率は縮小します。
海外投資等損失準備金でも、資源探鉱事業法人の対象事業に一定の植林事業を加えるなどの見直しと2年の延長が示されています。海外事業という共通点だけで技術取引の控除と準備金を同じものとして処理せず、対象法人と事業の要件を分けて確認します。
当時の国際取引は相手・収入・時期を確認
過去の税務資料を調べる際は、取引相手の区分を確認してから、どの収入が問題になっているかを整理しましょう。国際課税の一般論だけでは、個々の改正の適用対象を判断できません。
- 取引当時の当事者の区分。非居住者、外国法人など、どの区分として扱われていたかを資料で確認します。現在の居住地や会社の状況だけで当時の区分を決めないようにします。
- 契約の内容と対価。不動産代金、年金、利子、技術の譲渡収入を区別します。送金額だけを見るより、契約書や精算書と照合する方が収入の性質を把握しやすくなります。
- 改正の適用日と特例条件。不動産譲渡と非居住者の公的退職年金等については、要綱に平成2年4月1日以後という適用時期が示されています。契約日、譲渡や支払いの記録、適用条文を並べて確認します。
- 徴収額と申告の記録。源泉徴収されたことと最終的な税額の検討を区別し、当時の申告書を探します。後年の説明記事の率を使って過去の精算額を計算し直すことは避けましょう。
平成2年度の国際課税は、不動産譲渡収入への源泉徴収の導入と、対象を限定した特例の延長・縮減を分けて理解することが大切です。取引の金額だけで判断せず、当事者、用途、時期をそろえて当時の規定を確認してください。
出典
改正内容と適用時期は平成2年度税制改正の要綱(国立国会図書館収録)を参照しています。歴史的な制度の確認を目的とする記事です。改正の経緯は財務省「平成2年度の税制改正」を参照しています。






