平成25年度の国際課税では、海外との取引価格を検証する方法や、外国子会社合算税制と外国税額控除の関係が見直されました。海外事業がある企業にとって重要なのは、「外国に会社がある」という事実だけでなく、どこで利益が生じ、どの国で税がかかっているかを分けて確認することです。
この記事では、平成25年1月24日の与党大綱と財務省の改正資料をもとに、移転価格、二重課税調整、海外投資家の債券課税を整理します。当時の改正を理解するための記事です。
国際課税改正の全体像
改正は、適正な価格で課税するための仕組みと、同じ所得への課税が重なる場面を調整する仕組みに分かれます。まずは、自社がどの場面に当てはまるかを見極めましょう。
| 場面 | 見直しの内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 海外関連企業との取引 | 利益水準指標に営業費用売上総利益率を追加 | 取引の機能、費用、比較対象の財務情報 |
| 無税国の子会社が別の国で納税 | 合算所得に係る外国税額控除の計算を見直し | 国別の所得・税額・課税関係 |
| 海外投資家が振替社債等の利子を受取る | 原則として非課税制度の適用期限を撤廃 | 債券区分、受取人属性、申告書類 |
移転価格税制にベリー比を追加
移転価格税制は、海外関連企業との取引が通常の取引価格で行われたものとして所得を計算する制度です。平成25年度には、独立企業間価格を算定するための利益水準指標に、ベリー比が加わりました。
売上総利益を営業費用で割る指標
ベリー比は「売上総利益÷営業費用」で求めます。売上高に対する営業利益率とは、分母も分子も異なります。名称に「利益率」とあっても同じ数字を比較してよいわけではありません。
| 売上総利益 | 1,500万円 |
|---|---|
| 営業費用 | 1,000万円 |
| ベリー比 | 1.5(150%) |
この例は計算方法を説明するための仮定であり、1.5が適正な水準だと示すものではありません。比較対象となる独立企業の取引実態や会計処理もそろえたうえで、妥当性を検証します。
販売仲介活動などで検討する
財務省の資料は、販売仲介業者等の販売サービス活動のように、利益が営業費用に比例する活動を例示しています。製造、研究開発、重要な無形資産の保有などを行う企業に、指標が追加されたという理由だけで一律に当てはめることはできません。先に機能とリスクを整理し、その活動に合う指標を選ぶ順番が大切です。
外国子会社合算と外国税額控除
子会社の本店が無税国にあっても、その支店などが別の国で課税されることがあります。所在地国だけで非課税と判断すると、実際には海外で納税している所得への二重課税を調整できなくなる場面がありました。
本店所在地国以外で課税される場合を調整
当時の特定外国子会社等に係る合算所得について、本店所在地国以外の国で課税される場合には、外国税額控除の適用上の取扱いが見直されました。財務省の資料では、合算所得を国外所得とみなすことにより控除限度額を設定し、二重課税を調整する仕組みが示されています。
外国で納めた税を無条件で全額返してもらえる制度ではありません。合算対象、所得の区分、外国税の性質、控除限度額を順に確認する必要があります。個人の海外株式の配当についての手続と、法人の外国子会社合算税制における調整も区別してください。
海外投資家の債券課税
国際的な資金の流れを支える制度として、非居住者や外国法人が受ける振替社債等の利子の非課税措置も見直されました。非課税の恒久化は、対象や手続をなくすことを意味しません。
期限撤廃と例外を確認する
原則として制度の適用期限が撤廃される一方、一定の社債的受益権や被災地の地方公共団体と完全支配関係にある法人の利益連動債には、別の期限が設けられています。発行者の特殊関係者に当たる受取人など、非課税対象から外れる場合もあるため、債券の名称だけで判断しないようにしましょう。
公社債課税の変更に伴う、所有期間による按分の見直しや振替割引債の償還金の取扱いは、平成28年1月以後の支払に関する変更です。平成25年度改正の資料に載っていても、直ちにすべての利払へ適用されるわけではありません。
実務で確認したい資料
国際課税の確認では、国内の会計帳簿だけでは足りません。海外拠点の取引と納税がつながる資料をそろえることで、説明の食い違いを減らせます。
- 取引と役割の資料。 契約書、請求書、組織図に加え、どの会社が販売・在庫・信用などのリスクを負っているかを整理します。ベリー比を使う理由も、取引実態から説明できる必要があります。
- 国別の納税資料。 子会社本店と支店の所得計算、納税証明、現地の申告資料を対応させます。無税国に本店があるから海外税額はゼロ、と決めつけないことが重要です。
- 適用時期と手続の資料。 事業年度の開始日、支払日、対象となる租税条約、届出の要件を確認します。別年度の改正や署名段階の条約を、当時すでに適用されていた制度と混同しないでください。
平成25年度の国際課税は、取引実態に合う価格検証と、実際の課税関係に合う二重課税調整を進めた改正です。所在国、取引内容、納税地、適用時期を一つずつ分けると、複雑な制度も整理しやすくなります。
参考資料
当時の与党大綱と公的解説をもとに整理しています。個別の適用要件・経過措置は成立法と政省令で確認してください。
表・模式図は編集部による整理。金額例は説明のための仮定です。



