平成22年度の金融・証券税制で押さえたいのは、少額投資を非課税にする仕組みが設計されたことです。ただし、当初の制度案と、平成26年に実際に始まったNISAは同じではありません。「平成24年から」「最長10年」という古い資料を見つけたときは、その資料がどの改正時点を説明しているかを確認する必要があります。
この記事では、平成21年12月22日に公表された平成22年度税制改正大綱を基準に、少額投資非課税措置と関連する証券税制の変更を整理します。現在の口座開設手続きを説明する記事ではなく、制度の出発点を確認するための歴史資料としてお読みください。
少額投資非課税措置の当初設計
この年度の大綱は、個人が株式市場に参加しやすくするため、一定の口座で保有する上場株式等の配当や売却益に税金をかけない仕組みを盛り込みました。上場株式等に対する税率を20%の本則へ戻す予定に合わせて、少額投資の負担を和らげる設計です。
年間100万円の新規投資が対象
金融庁の当時の説明資料は、投資枠を毎年100万円、3年間で最大300万円と整理しています。これは利益の上限ではなく、新たに購入する商品の取得金額の上限です。たとえば80万円分を買うケースでは、80万円そのものが控除されるという意味ではありません。その対象商品から生じる配当や譲渡益を非課税にする考え方です。
| 項目 | 当時の内容 |
|---|---|
| 非課税の対象 | 非課税口座内の上場株式等の配当・譲渡益 |
| 年間投資額 | 新規投資額100万円まで |
| 口座設定の予定期間 | 平成24~26年の各年 |
| 保有期間 | 最長10年間 |
| 対象年齢 | その年の1月1日に20歳以上 |
| 未使用枠・売却済みの枠 | 未使用枠の翌年への繰越不可、売却部分の枠の再利用不可 |
非課税の口座でも損失の扱いに注意
利益が非課税になる一方、口座内の譲渡損失は税法上ないものとして扱う設計でした。課税口座の利益と相殺して税負担を下げる仕組みとは区別しましょう。非課税という言葉だけで判断せず、利益と損失の両方を確認するのが、制度を理解する近道です。
また、配当については口座を開設した金融商品取引業者等が支払いを取り扱うものに限る、という条件も設けられていました。単に株式を持っていれば、あらゆる受取方法の配当が対象になるわけではありません。出典:平成22年度税制改正大綱27~28ページ。
公表時の案と実際のNISA開始を区別する
当初の開始予定は平成24年でしたが、NISAが実際に始まったのは平成26年1月です。古い解説に書かれた予定を、そのまま実施の事実として読まないようにしましょう。
| 資料の時点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 平成22年度改正時 | 平成24年開始予定、年間100万円、最長10年という当初設計 |
| 平成26年の制度開始 | 年間100万円、最長5年の一般NISAとして開始 |
| 令和6年の新制度開始 | つみたて投資枠・成長投資枠を併用する新しいNISAへ |
出典:国税庁の平成25年改正後のNISA説明、金融庁「NISAを知る」。
↓
当初の開始予定:平成24年
↓ 後の改正で制度を変更
実際の開始:平成26年1月
ここでの結論は、「平成22年度に制度の出発点がある」と「平成22年度にNISAを利用できた」は別の話だということです。現在の利用条件を知りたい場合は、当時の表ではなく金融庁の現行制度の説明に進んでください。
そのほかの金融・証券税制の変更
少額投資の制度だけを読むと、この年度の証券税制を見落とします。国税庁の改正資料には、既存の株式の取得費や、特定口座で受け入れられる株式の範囲の変更も掲載されています。
古い上場株式の取得費特例が終了
平成13年9月30日以前に取得した上場株式等についての取得費の特例は、平成22年12月31日までの譲渡を期限として廃止されました。過去の売却記録を検証するときは、購入時期だけでなく、売却日が期限内だったかも確認します。取得費の特例と、通常の取得費の計算を混ぜないことが大切です。
組織再編で取得した株式の特定口座への受入れを整備
合併・分割・株式交換・株式移転によって取得した一定の上場株式等が、特定口座へ受け入れられる範囲に加えられました。対象は各再編の交付内容などに条件があります。会社が再編されたという事実だけで判断せず、何を対価として受け取ったかを確認する必要があります。
これらの項目は、国税庁「平成22年度税制改正のあらまし」1~2ページに掲載されています。
債券の損益通算拡大は検討事項
金融商品間の損益通算を広げる方向も示されましたが、金融庁資料では、公社債の利子・譲渡所得を申告分離課税とする方向で平成23年度改正において検討する、とされています。この段階で全面的な一体化が実施されたと説明するのは適切ではありません。決まった改正と、翌年度以降に検討する課題を分けて読んでください。
古い資料を読むときの確認順序
制度の歴史を調べるときは、年度と適用時期のずれを先に確認すると迷いにくくなります。次の3点を順に照合してください。
- 資料の日付を確認する。平成22年度大綱の公表基準日は平成21年12月22日です。年度名の2010年と公表年の2009年を取り違えないようにします。
- 決定事項と検討事項を分ける。少額投資の制度設計と、債券課税の将来の検討では確定の程度が異なります。資料の「導入」「検討」という表現まで読みます。
- 後の改正と実施内容を照合する。非課税期間などの数字が資料によって違う場合、誤植と決めつける前に、どの時点の制度なのかを確かめます。
平成22年度の金融・証券税制は、少額投資を促す制度の設計と、既存の証券取引に関するルールの整備を合わせて見ると理解できます。過去の取引を調べる場合は、対象年の法令と実施後の資料に戻って確認しましょう。
公開日の根拠:内閣府の平成22年度税制改正大綱掲載記録。民主党政権期の政府税制調査会による大綱を基準としています。後年の制度との比較説明は、歴史上の内容を明確にするために付記しました。







