平成4年度(1992年度)の国際課税は、海外との取引を利用した課税回避への対応と、国際的な事業活動に対する制度整備が同時に進んだ年度です。過少資本税制の創設、タックス・ヘイブン税制の判定方法の変更、外国税額控除の見直しが主要な論点となります。
税率だけを比べても、この改正の意味は見えません。親会社からの借入れ、海外子会社の税負担、外国で支払った税金という異なる対象を分けると、改正が自社のどの取引に関係するかを整理できます。以下は当時の制度を説明する沿革記事です。
平成4年度の国際課税を一覧で確認
課税の適正化に関する改正と、投資・取引を円滑にする措置を分けて読むと理解しやすくなります。まずは、対象と変更点を対応させましょう。
| 対象 | 改正の要点 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 海外関係会社からの借入れ | 過少資本税制を創設 | 借入契約・資本関係・支払利子 |
| 海外子会社等 | 軽課税国の指定方式を廃止し会社ごとに判定 | 所在地だけでなく各社の税負担 |
| 外国税額控除 | 外国孫会社の外国法人税を間接控除の対象へ追加 | 資本関係と外国税の記録 |
| 技術等の海外取引 | 特許権等収入の控除率12%から8%へ | 契約の取引区分・対象収入 |
過少資本税制で親会社借入れを確認
海外の関連会社からの借入れを増やし、支払利子によって日本側の所得を過度に減らす行為に対応するため、過少資本税制が導入されました。借入れ自体を禁止する制度ではなく、一定の超過部分に対応する利子を損金に入れない仕組みです。
借入額と資本の関係が判断の出発点
平成4年度の要綱は、海外関係会社からの借入金が原則として自己資本の3倍を超える場合、超過額に対応する支払利子を損金不算入とする方針を示しています。実際の適用では、対象となる国外支配株主等、資本持分、負債や利子の計算を、改正法の定義に照らして確認する必要があります。
単純な例で仕組みを理解する
制度の考え方だけを示すため、判定に用いる資本を1億円、対象借入れを4億円と仮定します。3倍の3億円を超える1億円が、超過部分の検討対象となります。ただし、この例から支払利子が一律25%損金不算入になると判断することはできません。実際には平均残高や資本持分の計算、適用除外などを確認して判定します。
借入契約の金額だけでなく、誰が貸し手で、どのような資本関係があり、対象期間にいくら利子を払ったのかをそろえることが重要です。
タックス・ヘイブン税制は国指定から会社別判定へ
軽課税国をあらかじめ指定する方式が廃止され、海外子会社等が軽課税国に所在するかどうかを子会社等ごとに判定する仕組みへ改められました。所在地の国名だけでは、適用を判断できなくなる点が大切です。
同じ国にある会社でも個別に確認する
例えば同じ国に子会社A社とB社がある場合でも、現地の優遇措置や課税の状況は異なり得ます。国名を一つの一覧に当てはめるだけで終わらせず、各社に適用された税制と実際の税負担を確認する順序になります。
この変更を、海外子会社の所得がすべて日本で合算される改正と理解するのは適切ではありません。軽課税かどうかの判定と、その他の合算要件・適用除外の検討は分けて行います。
外国税額控除は対象拡大と計算見直し
外国税額控除の改正には、控除対象を広げる面と、控除限度額の計算を厳しくする面があります。「拡充」という一語だけで読むと、後者を見落とします。
外国孫会社の税額を間接控除に追加
間接外国税額控除の対象に、外国孫会社が支払った外国法人税の額を含める改正が行われました。外国子会社だけでなく、その先の会社を通じた事業活動にも対応する制度整備です。対象となる資本関係や配当などの要件を満たすかは、当時の法令で確認します。
外国で非課税となる所得の除外割合を変更
控除限度額の基礎となる国外所得から除外する、外国で課税されない所得の割合は、従来の2分の1から3分の2へ改められました。経過措置を伴う改正であり、外国で非課税の所得を全額そのまま控除限度額の計算に使うことはできません。
| 仮定 | 従来の除外額 | 改正方針による除外額 |
|---|---|---|
| 該当する外国非課税所得が300万円 | 150万円 | 200万円 |
これは除外割合の違いを示す例であり、控除できる外国税額そのものを計算した表ではありません。最終的な控除額は所得全体や控除限度額、経過措置などによって変わります。
海外技術取引と対内投資の改正も確認
国際課税の改正は課税回避対策だけではありません。技術取引の特例を見直す一方、認定を受けた外資系企業への投資支援も整備されました。
- 技術等海外取引の所得控除:特許権等の譲渡等による収入に対する控除率を12%から8%へ引き下げました。一方、生産設備等の建設等に関する対象役務に環境対策関連設備の建設等を加え、期限を2年延長しています。縮減と対象拡大が同時にあるため、契約の種類ごとに読み分けます。
- 認定外資系企業への支援:関連法に基づく認定等の条件を満たす企業には、一定の建物・機械装置について5年間20%の割増償却を認める措置が設けられました。また、設立等から3年以内の一定の欠損金について、繰越控除期間を5年から7年とする特例も示されています。外資が入っているだけで自動的に使える制度ではありません。
- 外国法人の短期国債等:発行から償還まで継続して一括登録された短期国債・政府短期証券の一定の償還差益を非課税とし、源泉所得税を償還時に還付する措置があります。国内の恒久的施設の事業に帰属する所得は除外されるため、保有者と所得の帰属も確認します。
公表日と適用時期を分けて読む
与党の平成4年度大綱は平成3年12月19日の資料として記録されています。その後、政府の要綱は平成4年1月10日に閣議決定されました。記事の日付は大綱の時期ですが、個々の制度の適用日は別です。
例えば外国法人の短期国債等に関する措置は、平成4年4月1日以後に発行される割引債の償還差益が対象です。芸能人等の非居住者報酬についても、同日以後の役務提供・支払いという区分が示されています。国際取引の沿革を確認するときは、会社の関係、対象所得、取引日を一つずつ対応させましょう。







