平成3年度の法人税制では、特別償却の割合や対象範囲の見直し、適用期限の延長が行われました。同じ「延長」という記載があっても、従来と同じ条件が続くとは限りません。割合の引下げや対象資産の縮減と合わせて読むことが大切です。
さらに、年度中には湾岸戦争への支援財源として法人臨時特別税が追加されました。この記事では、当初の税制改正の要綱にある設備関係の見直しと、その後の臨時措置を分けて整理します。
設備の特例と追加の臨時税を区別
当初の要綱に記載された改正と、年度中に追加された措置では、決定の経緯が異なります。まずどの資料で示された制度かを確認すると、平成3年度全体を振り返りやすくなります。
| 区分 | 主な内容 | 読む際の注意 |
|---|---|---|
| 当初の要綱 | 特別償却の割合・範囲、最低取得価額、期限等の見直し | 延長と縮減が同時に行われる措置がある |
| 年度中の追加措置 | 法人臨時特別税 | 通常の法人税の税率変更と区別する |
法人臨時特別税は、平成3年1月11日の要綱決定後に行われた改正です。この点を押さえると、年初の要綱だけを読んだ場合に見つからない措置がある理由を理解できます。
特別償却は割合と対象範囲を見直し
設備関係の特例では、割合の引下げに加え、対象となる資産の範囲を縮める措置もあります。名称に該当しそうな設備を持っているだけで、変更後も同じ特例が使えるとは限りません。
| 特例 | 要綱で示された変更 |
|---|---|
| 公害防止用設備 | 特別償却割合を20%から19%へ。対象設備の範囲も縮減 |
| 電線類地中化設備 | 特別償却割合を14%から12%へ |
| 地震防災対策用資産 | 割合を14%から13%へ。対象範囲を縮減し、期限を2年延長 |
| 産業構造転換用設備等 | 対象範囲を縮減したうえで、期限を2年延長 |
| 航空機 | 対象資産の範囲を縮減 |
償却割合の差は税金の減少額ではない
例えば、公害防止用設備の特例を理解するため、計算対象となる取得価額を1,000万円と仮定すると、20%相当額は200万円、19%相当額は190万円です。割合による計算額の差は10万円になります。
ただし、この10万円は、割合の変更だけを比べた償却額の差です。法人税が10万円増える、あるいは取得価額の19%だけ税金が直接減ると説明する数字ではありません。実際の税額には、所得計算、他の償却、適用要件などが関わります。
税額の率と償却の割合を別の欄に
減価償却の特例は、資産の費用計上を扱う仕組みです。一方、税額そのものを計算する率とは掛ける対象が異なります。資料に割合が登場したら、「取得価額」「所得」「法人税額」のどれを基にする数字かを先に確認しましょう。
中小企業の機械は最低取得価額を引上げ
中小企業者等の機械の特別償却では、対象となる取得価額の最低限度を160万円から180万円へ引き上げ、適用期限を2年延長する内容です。期限が続く一方で、対象となる金額の範囲は絞られます。
170万円の機械を例に金額条件を確認
例えば、取得価額170万円の機械は、160万円という金額基準と180万円という金額基準の間にあります。改正後の最低取得価額だけを見ると180万円に達しないため、旧基準のまま適用できると考えないことが重要です。
この例は金額条件の違いを説明するもので、改正前なら必ず使えたという意味ではありません。企業の区分、機械の種類、取得時期などの要件も別に確認します。古い申告書を調べる場合には、経過措置と取得日を合わせて確認してください。
法人臨時特別税は法人税額を基に計算
平成3年度中に追加された法人臨時特別税は、法人税額から300万円を控除した額に2.5%を掛ける仕組みでした。所得に2.5%を直接上乗せする説明や、通常の法人税率そのものを2.5ポイント上げる説明とは異なります。
計算の基になる金額を取り違えない
例えば、対象となる法人税額が1,300万円であると仮定すれば、そこから300万円を引いた1,000万円に2.5%を掛けた額は25万円です。これは仕組みを示す例であり、個々の法人の最終納税額や適用事業年度を判定するものではありません。
財務省の史料は、この臨時措置を1年限りとしています。後の平成4年度の法人特別税とは、制度名、目的、適用時期を分けて確認しましょう。同じような名称が続くことだけで、同じ条件が自動的に延長されたと扱わないことが大切です。
設備台帳と申告書は変更項目ごとに照合
過去の法人課税を調べる際は、設備の取得資料と税額の資料を分けて整理します。次の順番で確認すると、特例の延長という記載だけに頼る判断を避けられます。
- 設備の種類と取得価額を特定します。台帳、請求書、契約書を照合し、特例の対象となる設備か確認します。名称が似ている設備でも、範囲縮減後の対象かどうかは当時の規定で判断します。
- 割合、対象範囲、期限を別々に記録します。2年延長された特例でも、割合や範囲が変わる場合があります。3項目を分けて一覧にすると、従来の計算をそのまま続けてよいか検討しやすくなります。
- 取得日と経過措置を確認します。年度名だけで設備の適用条件を決めず、取得や事業使用の記録と附則を照合します。改正前後にまたがる設備では、この時点の確認が欠かせません。
- 臨時税は法人税額の資料で確認します。設備の取得価額をそのまま課税標準に使わず、対象事業年度と法人税額を確認します。後年の法人特別税の記録と混ざっていないか、制度名も照合します。
平成3年度の法人課税は、設備特例の整理合理化と追加の臨時措置を分け、数字が何に掛かるかを確かめることが要点です。当時の台帳と申告書をそろえて、率・範囲・期限・適用時期を順に確認してください。
出典
設備関係の改正内容は国税庁「平成3年度統計年報書」付録・税制改正の要綱(特別償却制度)、法人臨時特別税と決定経緯は財務省「平成財政史」法人税および平成3年度の税制改正を参照しています。本記事は当時の改正を振り返るものです。








