平成2年度の個人所得課税では、公的年金等控除の引上げと住宅取得促進税制の拡充が、暮らしに関わる主な改正です。年金については所得を計算するときの控除額が増え、住宅については税額控除の期間が5年から6年に延びました。同じ「控除」でも、計算のどの段階で差し引くかが違います。
この記事は、平成元年12月の改正議論と平成2年1月12日閣議決定の要綱を整理した歴史解説です。当時の金額や期間を、現在の年金や住宅購入の申告条件として使わないよう、年度をそろえて読んでください。
年金と住宅の変更点
改正前後の比較では、年齢と対象となる年を最初に確認します。年金の受取額が増える改正と、税負担の計算を変える改正は分けて考えましょう。
| 項目 | 改正前 | 平成2年度改正 |
|---|---|---|
| 年金控除の最低保障額・65歳以上 | 120万円 | 140万円 |
| 同・65歳未満 | 60万円 | 70万円 |
| 住宅取得促進税制の控除期間 | 5年間 | 6年間 |
| 対象増改築等の工事費用要件 | 200万円超 | 100万円超 |
公的年金等控除の引上げ
公的年金等控除は、受け取った公的年金等から所得を算出するための控除です。控除が増えると、同じ年金収入でも所得として計算する額が小さくなる方向に働きます。
年齢に応じて定額控除と最低保障額を見直し
改正では、定額控除が65歳以上で80万円から100万円へ、65歳未満で40万円から50万円へ引き上げられました。最低保障額は上の表のとおりです。定額控除と最低保障額を二重に足して差し引く制度ではなく、所定の計算と最低保障額を比較する仕組みとして理解します。
収入から所得、所得から税額へ
年金の控除額と、所得控除である基礎控除などは役割が異なります。まず年金に係る所得を計算し、ほかの所得との関係を整理した後、所得控除や税率の計算に進みます。控除が20万円増えることは、手取りや還付が一律20万円増えるという意味ではありません。
源泉徴収の基準とも区別する
要綱では、源泉徴収等を要しない限度額の引上げも示されました。源泉徴収は支払時の税の徴収方法であり、最終的な所得税額や申告の必要性と常に同じではありません。複数の収入がある場合に、年金の支払時に税が引かれていないことだけで、申告不要と判断しないことが大切です。
住宅取得促進税制の拡充
住宅取得促進税制は、一定の住宅取得や増改築の借入金等について、年末残高をもとに所得税から税額控除する仕組みです。平成2年度は、控除できる期間と対象工事の費用要件が拡充されました。
控除期間を6年へ延長
控除期間は、自己の居住の用に供した年から6年間となりました。従来の5年間に比べて、要件を満たす場合に控除を受ける機会が1年増える改正です。期間が延びても、毎年同じ金額が必ず戻るとは限りません。年末残高、所得税額、継続して満たすべき要件が関わります。
一定の増改築の費用要件を引下げ
対象となる増改築等の工事費用要件は、200万円超から100万円超へ引き下げられました。たとえば工事費用が150万円であれば、金額の条件だけを見ると新しい基準を超えます。ただし、工事の種類や借入金、居住などの条件もあるため、「100万円を超えた工事はすべて対象」とは読めません。
要綱は、この住宅税制の改正を平成2年1月1日以後に居住の用に供する場合に適用するとしています。契約日や工事費の支払日だけでなく、入居した時期を確認することが重要です。住宅ローン減税の税制改正を比較する際も、まず居住開始年をそろえましょう。
過去の資料を調べる手順
年金と住宅のどちらも、古い説明の数字を見つけたら、適用年と計算の段階を確認します。次の順番で資料を並べると、制度の取り違えを防げます。
- 年金は収入と年齢を確認する。振込額だけでは、税の計算に使う収入額と一致しないことがあります。年金の支払資料と該当年の年齢を確認して、当時の控除表を使います。
- 住宅は入居日と工事の内容を確認する。控除期間の延長と工事費用要件の引下げは、対象や時期の条件と一緒に読みます。契約書、工事明細、借入金の資料を対応させることが必要です。
- 控除の種類をそろえて比較する。年金の控除は所得の計算、住宅の控除は税額の計算です。金額だけを横並びにせず、どこから差し引く制度なのかを確認してから負担への影響を考えます。
出典と年度の位置づけ
当年度の要綱を中心に、財務省公開の財政史で改正の経緯を確認しました。与党大綱の党議決定は平成元年12月19日、政府要綱の閣議決定は平成2年1月12日で、決定の段階が異なります。







